ドールと「チューボーですよ!」 (後編)


―TBSの長寿番組「チューボーですよ!」は、間もなく放送1000回を迎えるのを記念して、特別番組「チューニボーですよ!!」を放送すると発表し、赤坂サカスで会見を開いた。


―「チューニボーですよ!!」は「チューボーですよ!」では扱わないB級グルメなどを堺巨匠とアシスタントの二人だけで作る料理番組である。


―会見には番組のアシスタントを務める沙織(さしき)さおりが登場。以下、会見の様子をご覧ください。






―あれ?沙織さん、その左手はどうしたのですか?


これですか?これは闇の力を封印して…おっと、何でもありません。

―闇の力?


何でもありませんよ。聞かなかったことにしてください。

―分かりました。


―ところで、沙織さんはふだん料理はされますか?

もちろんです!


―まさか、牛丼を湯煎したり、味噌汁サーバーで味噌汁を作ったりすることじゃないでしょうね?

当たり前です!失礼な!そんなの料理と呼べませんよ!


―じゃあ、キャベツの千切りとかもできるのですか?

当然です!


―では、今この場でキャベツの千切りを披露していただけますか?

えっ!?ちょっと待ってください!


―何ですか?まさか、できないなんて言うんじゃないでしょうね?

違いますよ!


「千」でいいのですか?

―え?どういう意味ですか?


だから、たったの「千」切りでいいのですかと聞いているのです。私の腕なら、さらにその上…


キャベツの「万切り」ができます!

―万切り…だと!?


―で、では、その「万切り」を披露していただけますか?

分かりました。

―準備しますので、しばらくお待ちください。


―お待たせしました。それでは、お願いします。


いきますよ…


トンッ!


終わりました。

―えっ?全然切れてないじゃないですか!それに「トンッ!」って一回しか音が鳴っていませんでしたよ!


貴方には一回の音に聞こえたのですか…では、このキャベツをよく見ててください。


つん!


パサッ!

―な、なにー!切れてる…だと!?


このキャベツは自分が切られたことに気が付いていなかったのです。

―ば、ばかな…


―で、では、「トンッ!」という一回の音は、切るスピードが速すぎて音が重なって聞こえたということですか?

その通りです!


これでも私の料理の腕に納得がいかないのなら、この左手の封印を解き「万切り」のさらに上、「億切り」や「兆切り」を披露することになりますが…はたして、このまな板が持ちこたえられるかどうか…


―もう結構です!沙織さんの実力は十分に分かりました。ぜひ、沙織さんのお力で高視聴率をお願いします。

任せてください!






―…さん…沙織さん!聞いてますか!


は、はい!

―何、ボーッとしているのですか?会見中ですよ!

すみません。


―で、その左手はどうしたのですか?

これですか?これは、闇…


闇鍋をしていた時に、やけどしてしまいました。

―まったく…しっかりしてくださいよ!収録中に怪我でもしたら番組を降りてもらいますからね!


フッ…貴様など私が本気を出せば一撃で…


―何か言いましたか?

いいえ、一生懸命頑張るのでどうかよろしくお願いします。


なーんてね。全部ウソです。
以上、厨二病ですよ!編でした。

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